相続というものは、親の遺産は、配偶者と兄弟でそれぞれ決まった割合で分配するのが当たり前だと思っていた。
3億円ぐらい貯蓄があって、じゃ、長男は1億、長女も1億、次男も1億ときれいに分けれればよいのかもしれない。
だが、親に貯金がなくて、住居や土地だけ残っているということになるととても問題だ。家土地を査定したら1千万ほどで貯金はなかったとすると、誰かが家を受け継いだら、他の兄弟に対して300万ずつは払うことになるのだろうか?どうなるのか、詳しいことはわからないが、とにかく分け合うということが遺産の相続としては当たり前だと思っていた。
こういう例が身近であった。家庭内でいろいろこじれて、妻が子連れで家を飛び出してしまった。その後、夫がなくなったが、妻や子はその家や土地をどうこうするつもりはなかったので、夫の親族が妻や子に連絡を取って夫名義の不動産について、財産放棄をしてもらった。それも大変な手間がかかった。
ところが、実は不動産の中には、夫の親の名義になっていたものがあった。その財産は、夫の名義の不動産の財産放棄手続きをしても、対象に含まれないというのだ。
夫の親名義の不動産は、夫のすべての兄弟と、その兄弟たちそれぞれの子供に相続権がある。なかなか連絡が取れないそれぞれの子供に財産放棄の手続きをしてもらわないと、実際にその場所に住んでいる親族も不動産をどうこうすることができないのだ。
ところが、それ以前の名義のものは、変更する必要がないのだという。というのは、戦前は家督相続という制度があって、一人の人間が家督を相続するということになれば、親が持っていたすべての財産をその人が相続するということになっていたので、この人の親はそれ以前のいろいろな名義のすべての財産を相続したことになっているのだという。
家督相続という言葉は聞いたことがあったけれども、こういう形で現実的なものに接するとは思わなかった。
そして、案外合理的な考えかもしれないと思った。
もし、預金とかがなくて、住んでいる住居と宅地だけあった場合、相続の手続きをすると言っても、多くの場合家を3つに分けることはできないのだから、兄弟がそれぞれ我を張って自分の取り分を要求したとすれば、家は売るほかはないだろう。売って金に換えたとしても、おそらく住み続けるほどの利益をその物件はもたらさない。
次男次女は、養ってもらうか、他の家にもらわれるか、勝手に都会に飛び出していくか、どれかしかないけれども、それがわかっていればそれに対して準備することもできるだろう。バラバラになってしまえば、結局保てなくなってしまう。