J-CASTは5月16日、岡山大、広島大、熊本学園大からなるグループが双葉町の依頼で全町民を対象にしたアンケート調査を行い、鼻血などの症状の統計が有意に多かったという結果を得ていたと報じた。
この中間報告が、熊本学園大の中地重晴教授により13年11月に学術雑誌に発表された。ここでは、鼻血を含む様々な症状について福島県双葉町のほか、比較調査のためか、宮城県丸森町、滋賀県長浜市木之本町で調査を行い、被災地である双葉町・丸森町で有意に多かった、となっている。
ただ、この調査で鼻血などの症状が原発事故による被曝に起こったものかどうかは断定はしていない。記事によれば、まだ結論を出せる状態ではないが、昨年の8月に町には調査結果を報告しているという。
自分としては、今の時点で放射線によって確かに鼻血が出る、という結論が出せるかどうかは考えても仕方がないと思う。十分疑わしいとは思う。しかし、学者さんがまだ結論が出せないというのであれば、それは結構なことで、きちんと調査するなり検討するなりしていただければと思う。
大きな問題は、鼻血は確かに出ていたのであり、それを訴える人がいて、それに応えて行政がきちんと調査をし、確かに鼻血が出たという調査結果を得ていたにもかかわらず、双葉町も福島県も政府の要人も福島県選出自民党議員も声をそろえて「そんな事実はない」「考えられない」「風評である」と言った点である。
つまり、完全に彼らは嘘を言っていたのだ。
一方で、美味しんぼは、主人公が医師にかかって「今のところ科学的には因果関係がない」ということも言っているし、当時調査を実査した双葉町の首長にも取材をしていた。その調査では結果的に鼻血は多いという結論が出ていた。つまり、実はかなり正確に取材をしたと言える。
さて、先週末17日に安倍首相は福島県を訪問し、甲状腺の検査をご視察になった。この際産経新聞によれば「福島の人が放射線の影響があるのではないか心配になると思うが、他県と全く同じで問題ないという情報を出すことが重要だ」と仰ったことになっている。
ところがこの記事が各新聞に載った18日、いくつかの地方新聞が、福島県の18歳以下の37万人を対象に行われた甲状腺検査の8割のデータがまとまり、2月に発表した甲状腺がんが「確定した」患者17人が50人に増えた、と報じた。山陰中央新報には載ったのである。中日新聞なども報じている。しかし、Yahooなどを検索してみても、大手メディアが報じた様子がない。この調査の実施主体は県で、情報の出所は「関係者」となっている。
つまり、これも「他県と同じで全く問題ない」というのは、全くの嘘だということになる。もっとも、この情報が安倍さんの訪問の直後に行われているのも不自然ではある。誰かが、安倍首相の言動に反発して情報をリークしたのだろうか。
いずれにしても、政府や福島県の姿勢は、まるで「絶対原発事故で健康被害があったとは言わせない。そういう人には死んでもらうしかない。全部事実はもみ消します。」と言っているように私には聞こえます。
なんでも美味しんぼはこの後福島県内で風評被害に悩む農家などを載せるつもりだったらしい。私のところも今日田植えだったけれども、同じ田んぼを作るのでも、土の放射能、水の放射能、産物の放射能など様々な問題に取り組む農家の皆さんは、これは大変だろうと思う。
しかし、福島県や政府が嘘を発表してしまったら、農家の皆さんの努力も結局は報われなくなる。どうせ政府や福島県の言っていることは嘘だと判断せざるを得ないからだ。