震災から10年、というわけで、何か日本テレビさんが三号機の爆発について映像解析をし、特集番組を組まれたらしい。お薦めに出てくる。
当時に比べてより細かいことがわかってきたというわけだ。
しかし、なぜ3号機と1号機の爆発があれほど違っているのか、という説明は今一つのように感じる。動画では要するに原発の下にあるケーブルなんかが気化して爆発した結果、火球が生じてあの爆発になったと言っているようだが、いや、そんな爆発しやすいケーブルなんかあるの?
いいですよ。誰か原発に使われているケーブルを集めて爆発させて、どれぐらいの火球ができるものか、一度実験して見せてくださいよ。
自分はYoutubeで、たとえばガソリンスタンドとか、大きな事故の爆発映像をいろいろ見てみたが、3号機の爆発のようなものは一つも見当たらない。多量のガソリンが爆発しても、その爆発の様子はむしろ1号機のものに近いのです。無理ちゃうか・・・
しかし、何年もの間、テレビで扱われなかった3号機の爆発がテレビに出てきたのは、よかったと思うべきなのか。
以前YouTubeで「explosion reactor3」とかなんとか言って検索すると、きっとオーストリアのテレビで大柄な女性のニュースキャスターが3号機の爆発映像を食い入るように見つめている映像がヒットしたものだが、あれもYouTubeから姿を消したようだ。
個人的には、いまだに事故直後にFarewindsのアーニー・ガンダーセン博士が事故について語った以上の説得力のある解説を聞いていない。この動画も2011年にはFarewinds自体から発表されていたほか、日本の字幕がつけられたりして大量に上がっていたが、今ではほとんどYoutubeからは消えてしまっている。
ガンダーセン氏の説明は大まかに言うとこうだった。
1号機の爆発はdeflagrationで、3号機の爆発はdetonationである。detonationでは爆発の勢いが音速を越えるが、deflagrationではそういうことはなく、通常の爆発現象である。水素爆発ではdeflagrationしか起こらない。3号機はまず強い光が見え、黒い煙が高く上がっている。この黒い煙は、金属が気化したものと考えられる。こうして金属が気化したと考えれば、カリフォルニアやハワイでアメリシウムなどの放射性物質が観測されたという事実と一致する。
考えられる仮説としては、一旦水素爆発があり、燃料プールにあった燃料がそれによって吹き付けられ、そこで臨界反応が起きた、簡単な言葉でいえば一種の核爆発だったのではないか、ということだった。
ガンダーセン博士の説明は2011年3月26日に動画で発表されている。早かったんですよ。そして目にしている現象との整合性が取れていたから、当時Webを見ている人には非常に説得力があった。
自分の記憶では、その1年後の2012年になって、金沢大学が「福島第一原発三号機の爆発は爆轟(detonation)だった」と発表して、それがニュースになった。1年以上も後だったんです。
日本で目にする公の発表は「三号機は水素爆発」というもので、それに乗じていろいろなお偉いさん、学者さんが「核爆発なんて馬鹿な」と自説を繰り広げておられます。しかしそれでも、「ではなぜこの爆発が起きたのか」という説明は誰もしていない。
そして、この日本テレビの動画でも、この三号機の爆発についてはちゃんとした報告書が挙げられていないと言っている。
思うに、日本では兵器の開発が行われていない。これぐらいの爆発は、これぐらいの爆薬がいるとか、これぐらいの核反応が起こればこういう爆発が起きるとか、成功すると何キロのプルトニウムでこれぐらい(都市が殲滅するわけですが)、しかし、失敗するとこれぐらい、といった具体的なデータがない。
ガンダーセン博士は戦後間もない生まれの人だから、大きくなる途中でアメリカ国内では散々核実験が行われていて、成功も失敗も含めて様々なケースを見る機会もあったかもしれないし、そうしたデータが蓄積されている可能性もあると思うんです。博士が「あれは爆轟だった」と言ったときに、アメリカの基準でガンダーセン博士に「そんなバカな」という人はいなかったのだろうと思う。彼らは何度も兵器として爆発実験をしているのだから「あ、あれね?」と思っていたのだろう。
原発事故、風化なんてものじゃないですよね。消してるんだもの。