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小4虐待死のもやもや

最近ニュースで小4虐待死の話題が取り上げられている。亡くなったお子さんは、学校のいじめに関するアンケートに、父親から暴力を受けていることを書いた。ところが、教育委員会の担当課長という人物が、加害者である父親の剣幕が恐ろしくなり、そのアンケートのコピーを渡してしまったというのだ。

 

それだけではなかった。奥さんはかつて夫からのDVを市役所に相談していた。また、一時児童相談所に保護された児童に対して、父親は娘の同意書なる文書をもってきて、うちに返せと主張した。そして最後にはこの子は殺されてしまったのだ。

 

メディアはさかんにこの事件の前後の経緯を取り上げた。

しかし、その論調は「児童がせっかく勇気を振り絞って大人に助けを求めたのに、大人はそれを守ってあげられなかった」みたいなものだった。

 

何かもやもやする。

 

で、今日たまたま考えた。

仮に何かが違っていて、この子が助かったとしよう。
そのとき教育委員会も児童相談所も何らかのちがった対応をとったはずである。
たとえば、親から「アンケート用紙を見せろ」と言われて、この担当課長が「加害側と目される人物にアンケートなんか見せられるか」と突っぱねたとする。
すると恐らく父親は「保護者に対して見せることができないのか」というだろう。場合によっては訴える可能性もある。相手は保護者である。難しい判断を迫られる。

ひどい父親に対して「お前はすっこんでろ!」的なヒーローが子供を助ける。ドラマや西部劇ではそういうこともありそうだし、それはそれでありかもしれない。ジャン・バルジャンが、テナルディエからコゼットの命を救いました。しかしそれは、今の世の中では、日のあたる場所でできることではない。

いやいや、助かったかどうかではない。重要なのは、事件に関与したいろいろな立場の人々が、正しい行動をとったかどうかだ。その正しいかどうかは、法律やその行政の方針によって裏付けのあるものでなければならない。
もし各々の人が、その立場で考えられる正しい行動をとっていて、誰も規則に違反していないにもかかわらず、やはり児童の死がもたらされたのであれば、これはシステムが問題なのである。誰かが違反していたからその死がもたらされたのであれば、その違反に対して何らかの対処をすれば今後は同じ悲劇を防ぐことができるだろう。

 

報道番組は、このアンケートを開示してしまった担当課長の、法律上の罪を問題にしていない。あるいは政府の指針にこういう形で反している、というようなことを明らかにしていない。その行動が良かったのか悪かったの、その基準があったのかどうか明らかにしていないのだ。

もし仮に、保護命令が出ている人の戸籍・住民票を、その加害者に対して、窓口で大騒ぎされて困るから渡してしまった、ということになると、その職員は多分業務違反で懲戒処分を食らうと思う。それは、法律のことは私は詳しくないが、でもこれは決まっているはずです。それをやってしまったら、その人の安全は日本では保証されないことになってしまう。

ところが、この担当課長の行為について、そういう観点から批判している人が誰もいないのだ。

 

たとえばあなたが会社員だとする。上司がいる。見積書にハンコをついてもらって、お客様にご提示をした。ところが、その客が値引きを要求してきた。その金額は分からないでもないが、しかし、会社に承認された額はもう少し高い。あなたは言わなければならない「一度社内に持ち帰って検討します。」

普通の社会人は誰でもそういう経験がある。相手がどんな無理難題を吹っかけてきても、あなたは承諾できない。それはあなたの一存で決められる事柄ではないから。

なぜこの担当課長はそれを簡単に決められるのだろう?

それは、学校が組織ではないからだと思います。この人は担当課長という役職だが、要するに教員から役所に出向しているだけの人だと考えられる。学校長は人事権も予算権もない。教員は学校長の部下ではない。教員は特別の存在であり、「これがいい」と彼が思って実行することは、組織として止められるものは何もない状況にある。

 

だから、自分はもしこの問題が解決できるとするならば、それは学校という組織を根本から考え直すほかはないと思う。たとえば校長にもっと権限を与えるとか。

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