連続テレビ小説のあまちゃんは、人気を博しているが、どこかで大震災になるはずだと思っていた人も多いだろう。上半期の放映だから、9月には終わる。だから9月に入れば震災が起こるはず。そして今日震災の放映があった。
が、津波の映像は映らなかった。
一般的な説明では、やはりトラウマになっている人がいるから、ということだろうと思う。それはそうだろうと思う。自分は津波被害など何一つない遠方にいたけれども、それでも眠ってから大きな波が襲ってくるイメージをぞっとしながら思い浮かべた。
だけど、映像を見て、私は初めて津波というものがどんなものか理解した。
東北の津波被害については「まんが日本昔話」なんかでも取り上げられたことがあったそうで、見てみると、津「波」だから「波」なんだということで、葛飾北斎の海の版画のごとく、ざぶんと襲いかかる波が描かれた。最近まで津波というものを具体的にイメージできないで、あんな波がやってるのだと思っていた人も多いだろうと思う。でも、多分多くの人が、スマトラ大地震で津波がやってくる映像をみて、実は津波は海がそのまませりあがってきてすべてを飲み込んでしまうものなのだと初めて理解したと思う。そして、東日本大震災では、一般の人々を含め数多くの津波映像が記録され、動画サイトを通じて世界に広まったのである。
あの映像を入れておかなければ、作品としては片手落ちなのではないか。実際に津波はひどいものだからこそ、津波を描いた作品が成り立つのである。あれをもし20年後に見たら、多分誰も何が起こったのか真実がわからないのではないか。
ところで、はだしのゲンはどうなのか。松江市ははだしのゲンは過激な表現が含まれるとして、小学校の児童が読めないように閉架措置が取られた。
実ははだしのゲンで過激だと思われたのは、原爆の惨禍の描写ではなく、その後に出てくる兵士が民間人に行った残虐行為であって、それも本当にあったかどうかはわからない内容についてである。具体的には、日本兵が中国人にそういうことをやったということが描かれているのだけれど、それは原爆のように作者自身が体験したことではなく、そしておそらくは戦勝国、特に中国のプロパガンダによるものである可能性が大きい。
では、あの有名な反戦マンガのはだしのゲンであれば、いかなる過激表現も許されるのか。首を切ったり、凌辱したりするシーンを子供が見てもいいのか。原爆はどうなのか。津波に比べて悲惨だということはないのか。津波はダメで、原爆は大したことないから子供に見せるのか。
全部禁止するという判断もできるし、一応全部その通りに見せるという判断もできるだろう。しかし、震災についても戦争についても、メディアがそこに政治的な意図を持ち込んでいるところに問題がある。