どうも、「切ない」という言葉は、外国語にはないみたいですね。
ぴちぴちピッチピュアの28話を聞いた。社会科見学で植物園に行くバスの席順はくじ引きで、るちあさんは海斗君の隣を引き当てる。先生は隣の席の2人は一緒の植物についてまとめないといけない、みたいな課題を出して、ろちあさんは久しぶりにハッピーになるのだけれど、植物園内で、病気だから海斗についていてほしい云々で恋敵のみかるのもとに海斗が走っていく。
それで、そのたましいのかけらを集めているところの星羅さんが現れて、突然るちあさんのほうから流れてくる悲しい感情はなんなのか、私は何を感じているのか、みたいな問いをする。その辺の心理描写がなかなか聞き取れなくて、しかし要するにるちあさんは海斗君がみかるのところに走っていくのがつらいということは、絵を見ていたらわかる。つらいんだけど、思い続ける、「それが恋しているということなのαυτό σημαίνει είσαι ερωτευμένη(アフト・シメーニ・イーセ・エロテヴメーニ」と説明を終わると、星羅は「それは海斗君に対して感じていることなのね」みたいなことを言って消える。ちなみにエロテヴメーニは日本語になっているエロス、エロいの関連語で物語の中では恋愛感情を持っている場合に頻繁に使われています。
それで具体的に何をするということは言葉では描写されてはいないが、おそらく星羅さんはるちあさんのために歌を歌って、海斗君にかつてるちあさんの誕生日祝いにハイビスカスのキーホルダーを送ったことを思い出させるのです。
ところが日本語版を見てみたら、該当の箇所で星羅さんは海斗がどうこうというようなことは言っていない。「この思いは一体何なの?」と聞くのは一緒なのだけど、るちあさんは「あのときは切なくなっちゃったんだ」と答えている。すると星羅はその言葉を初めて聞いたらしく「せつない・・・?あれは『せつない』という思いなの?」とおうむ返しに返答する。るちあはどんなに心が痛くても愛さずにはいられない、それがいとしいということなんだよ、と説明すると、またもや星羅は「いとしい・・・ということ?」とおうむ返しにつぶやいて消える。海斗のことなどは一言も口に出していない。
https://youtu.be/ZsLRxtY6bbo?t=17m56s
おかしい!なんかちゃうやん!
ギリシャ語版みたいに海斗君のことを星羅がはっきり口に出せば、そのあとの出来事は星羅の仕業なのだな、と明示的にわかるが、日本語は少し飛躍した想像をしないといけない。
一方で、星羅さんはまだこの世に出てくる前なのだから、「せつない」だの「いとしい」だのという感情がわからないという日本語の意図も話の上ではわかる。
大きな流れは一緒なのだが、「切ない」の部分はギリシャ語はなんていってるんだろう。
この「せつない・・・?」というところの部分、なんて言ってるかよくよく聞いてみると、σου ξέσκισαν τη καρδιά;(ス・クセスキサン・ディ・カルディア?)、つまり「あなたの心が引き裂かれたの?」と言っているみたい。
翻訳サイトで「切ない」をギリシャ語にしてみたら、
Γλυκόπικρη ほろ苦い。甘く苦い。
επώδυνος 痛い 苦痛だ
λυπημένος 悲しい
みたいなのがヒットした。英語でもbittersweetとpainfulがヒットした。
切ない、に対する直接の訳は西洋の言葉にはないということなのだろう。そのかわり
σου ξέσκισαν τη καρδιά・・・切ない(君の心をずたずたにした)
είσαι ερωτευμένη・・・いとしい(君は恋している)
というような表現が当てられたということなのだろう。