トルストイの「イワンの馬鹿」で、イワンは王女と結婚して王様になることになったのだが、それでもやはり農作業がやりたくて作業着に着替えて畑に出る。そのときに王女様は迷うのだが「糸は針の行くところへついていかなくちゃ」と自分も農作業をはじめるのである。
多分、一般的な結婚というものはないのだと思う。人間の数だけ結婚の形がある。
自分としてはどうも受け身で使っている時間、テレビを見ているときとか、そういうのがいやだ。楽しいことを見つけたい。楽しいというのは、何も遊びたいということではなくて、何かに一生懸命になることができるということだ。そして、何かに取り組んでいる人は生き生きしていて応援したくなると思う。
そして、相方さんがそういう何かを持っていたとしたら。
グルジェフは、ハートマンの奥さんのオルガから、自分はグルジェフやハートマンがなりたいものになれるとは思わないが、彼らがそこに行きたいと熱望しているのはわかるので、その手助けをしたいと聞いた。そこでオルガ自身のことより夫やグルジェフのことを考えてくれるオルガの優しさをたたえたうえで、はじめのうちは私たちが階段を上るのを手伝うことができても、階段を上るにつれ1段、2段と自分のいる場所から遠ざかってしまう。だから私たちを押し上げるためにはあなたも一段か二段階段を登らなければならないんですよ、と言った。オルガは愛する夫のすることもいうこともわからなくなってしまう恐怖を感じたという。
ひょっとすると、なんとなく愛するというようなことは、最終的にはおかしいのかもしれない。
相手が農民だったら、自分も下手でも鍬をもって畑に出ないといけないのかも。一緒に鍬をもって畑に出てみた結果、この人でよかったと言えればそれに越したことはない。