ぴちぴちピッチの場合は登場人物の設定が著名な作曲家やミュージシャンだったりするし、それぞれのキャラクターでそれなりの品質の音楽が求められることになる。それでいくつかの印象的なピアノの曲がある。
大体、こんな曲があります
- 海斗のお父さんが作曲したというピアノ曲
- 水妖のユーリが人を操ったりダメージを与えたりする曲
- 海月先生がかつて恋したインド洋のマーメードのサラを思って作った曲
- 海月先生が旅立つ前に、波音に送った曲「水色の旋律」
4話ではコンサートで海月先生が海斗のお父さんの曲を弾き(12分27秒)、そのあとユーリが聴衆を操って人魚たちを捕まえようとする(15分2秒)
この海斗のお父さんの曲は全編にわたって重大な局面で繰り返し使われている。最初は海斗君に関するところだけだけれど、たとえばブラックビューティーシスターズの最後を暗示するような場所でも使われています。
ユーリの曲も敵方の曲だから怪しげな曲ではあるのだけれど、ある意味すごくいい曲だと思う。このトレモロといい、パワーといい、これ弾いてみたいかも?と思わせる曲になっている。
海月先生がサラを思って作った曲は、そこかしこで使われていて、前半のストーリーの中心的な役割を果たしている。が、この曲はちょっと単調な感じがする。
で、一旦は悪者側についたサラとの間を取り持つ形になった波音に対して、海月先生は恋愛相手としてつきあうということはなかったのだけれど、その感謝の気持ちを込めて「水色の旋律」という曲を贈る。これは波音さんが歌う曲としても何度も出てくるのだけれど、当初の設定はピアノ曲ということになっている。
そんなにアニメに詳しいわけじゃないから違ってるかもしれませんが、結構この作品は挑戦的というか、大変だったんじゃないかと思う。
たとえば、エヴァでシンジくんはチェロを弾くけど、あれはバッハの無伴奏チェロ組曲か何か既存の曲だったと思う。新しく作ったりしてないわけですよ。BGMとして作った曲はもちろんあるでしょうけど、それは戦闘の時の音楽とか限られるわけでしょ。
「時をかける少女」でも、タイムリープする際にはゴールドベルク変奏曲を効果的に使っているけど、あれもグールドのCDをかけるか、別に録音するにしても「この速さでこれを弾いてください」と言えば済む。
しかし、ピッチの場合にはほとんど自前で作らなければならず、それもそれなりの品質が求められる。それに劇場版じゃなくてテレビアニメなのだから2年通していろいろ作品を作り続けた、ということになると思う。
このピアノ曲にしたって、全体の音楽スタッフとは別にピアノ専用の依頼をしたのではないかと思うのです。たとえば歌の部分ではディストーションのかかったエレキギターの音とかそれはそれで印象的な形で入っているし、音楽スタッフとしてはあれもこれも必要だったと思う。
金や手間もかかったかもしれないけれども、参加した人にしてみれば、さぞかしやりがいのある仕事だったのではないだろうか。