自分は人生であんまり金持ちだったりしたことはない。
家族や親族で集まったときに、「もし宝くじが当たったら」みたいな話が出ることもある。でも、多分自転車操業のおうちに突然数億もの金が舞い込んできたら、これはこれで大変だと思う。
以前、こういう話を聞いた。なんでも退職金や貯金で数千万円の金があって、老後に困ることはないはずだった人が、痴ほう症になってしまって、悪徳セールス業者に目をつけられ、布団からリフォームからさまざまなものを売りつけられ、最後には自宅を手放してしまった。
もしこの人が信頼できる家族がいて、息子や娘やお嫁さんにすべてを任せて、自分はそこそこのカネで暮らしていたらこういうことは起こらなかったかもしれない。
考えてみると、金がなければ、貸してくれという相手も出てこないし、新しい洋服の一つも買おうと思わないかもしれない。金があるから、いろいろなセールスも来るし、泥棒や詐欺師も狙ってくる。金がなければ夏の暑いときに窓を開けたまま安心して寝ていられる。しかしもし金持ちだったら、玄関に鍵をかけるのはもちろん、耐火金庫を買ったり、犬を飼ったり、防犯カメラを設置したりしないといけないかもしれない。
死の問題もある。人に持ち家があって、後継ぎや相続する人がいない場合、その方がなくなると家・土地は国のものになるらしい。
だから、たぶんお金も腐るのだと思う。
ほかのものは腐る。価値が減る。売買をしていて農産物とか、ホテルや航空機の在庫などというのは、時間とともにみるみる価値が変わる。不動産などは上がったりすることもあるが、それでも建物などは建ててから年月がたてば痛んでくる。
これに対して貨幣というものは、保存しておいてもその価値が変わりにくいものが選ばれる。経済学ではそうなのかもしれないけど、なんとなく大量の金を持ち続けるってできないのだと思う。