ドン・ファンは、世界はイーグルの放射物と呼ばれるエネルギーフィールドからできている、と言っている。
この「放射物」というのはemanationという言葉になっているようだ。
日本語の放射物というと、どうしても放射線や光みたいにまっすぐ飛んでくるもの、みたいなイメージで受け取られる。だが、emanationという言葉は所謂世界創造の流出説などでも使われる言葉だ。おそらく大事なことは一つの源から派生的に生じてくるものという意味合いだということで、別に光でも放射線でもないのである。
ドン・ファンは自分の師はイーグルの放射物のことをイーグルの命令と言っていたと言っている。
なぜか、この翻訳者はイーグルを鷲とは訳さなかった。でも、ドンファンとカスタネダの会話はスペイン語で行われたはずだから、イーグルとは言わないで、アギラと言っていたはずと思う。つまり、ドンファンは「鷲から発散されるもの」みたいなことをいっていることになるわけで、文字通り受け取るとアニミズムの何かみたいに思うかもしれない。
しかし、ドン・ファン自身イーグルというのは、抽象的な、しかし確かに現実に存在する、ある種の力だと認めている。
私自身は、旧大陸の伝統が、神とその言葉とか、創造音オームとか言おうとしていたことと同じことを言っていると思う。
多分、それを直接見るということは、珍しいことかもしれないが、多くの人に起こっていることなのではないかと思う。ただ、それをその通りに見たとしても、それが言われているようなイーグルの放射物だとか神の言葉だとかいうものと同じことだとは、なかなかわからないと思う。ちょっとしたことで、かなりのことが起こり得る。だけど、その時に生きた概念が伝わっていない。古い言葉には違う解釈みたいなものがいっぱいくっついていて、元々の意味がこれこれの体験なり見ることから来ているとはなかなかわからない。