自分は農業機械をまだ運転しない。稲刈りのバインダー、こなしのハーヴェスタ、運搬車、こうしたものは使っているが、トラクターや田植え機のことは人に頼んでいる。
今年は去年田植えをした人とは別の人が行った。実はいろいろ問題がある。
これはなかなか難しいと言えば難しい。田植え機が田んぼにはまること。端っこまできれいに植えるにはどうしたらいいか。うちは今母の他、叔父や叔母もみんなしてうまく植わっていないところは手で植えることができる。だけど、幅がまちまちになったり蛇行したり、田植え機の一列だけうまく苗をつかんでいなくてある列だけ薄くなったり、いろいろあります。
このメンバーがいつまでも元気でいるかどうかわからないじゃないですか。ある程度の植え直しは必要だったにしろ、機械でできるところはできるだけきちんと機械でやってくれるほうがいい。ある程度の間隔を取りつつ、しかし、並んで一面に田んぼに植わってる状態にならなくてはならない。
もし、これが「この人に頼むとダメだ」ということになってしまうと、これはこれで大変で、次誰に頼むかということになる。
以前農協を通じて田起こしを頼んだら、とてもいい加減な人で、四角い田んぼの隅っこが丸く残ったりしていた。変えたら変えたで、ちゃんとした人が来るのかわからない。
では、最後は田植え機を買って自分でするのか。そうなのかもしれない。この辺できっちりやりたい農家さんは自分で機械を買う。が、こうしたからといって採算がとれるかというとほとんどの場合そんなことはない。
稲作に限って言えば、田植え機は春しかいらず、コンバインなどの稲刈り機は秋しか必要でなく、トラクターは秋1回春2回とかしか使わない。その機械を各農家が持っていて、みんな上手に運転する。それがいいのかもしれないけど、やっぱりシステムとして無理があると思うんですよ。そりゃクボタさんやヤンマーさんはいいですよ。売り上げが上がるから。でも100万も200万も出して、その年の売り上げが50万やそこらではどうしようもないですからね。
では、田植え機の検定を作って、「田植え一級」の人にはどれだけの報酬とか決めたらどうだろう?一級の人に頼むと、性格とか、経験とか関係なく、まあまあうまく植えてくれるみたいなのはどうだろう。
これも問題があって、試験をしようにも春先にある特定の時期に一斉に植えなきゃ意味がない。自動車の試験みたいに、モデルコースがあれば一年中なんとかなるというわけではない。これも無理か。
しかし、考えをめぐらすうちに、実は田植えに関する多くの部分はペーパーテストで補えるのではないか、と思えるようになってきた。苗箱には大体どれぐらいの稲があるのか。苗が何センチのときに植えるのがいいのか。代掻きの時の水の深さはどれぐらいにするのがいいのか。田植え機の爪の幅は何cmか。1反植えるのには何箱必要か。縦何メートル、横何メートルのモデル田んぼで、実際に植えることを想定して田植え機のルートを考えよ。
こういうの、農家の人は経験的に知っていて、実際うまい人はきちんと田植えをする。それをクボタもヰセキもヤンマーも、田植え機の規格は一緒なんだから、ペーパーテストで80点取れたら「田植え検定2級合格」みたいなので賞状かなんか出したらどうだろうか。
もしそういう検定本とかがあれば、たとえば都会から田舎に移り住んで農業をやりたいという方がいらっしゃっても、「まずは稲作検定」みたいなので勉強ができるじゃないか。仮にある人が検定と違うやり方をしていたとしても、「一応検定ではこうなってるけど、うちらはこれがいいと思ってるんだ」という話ができる。たとえばより密に植えていたり、間隔を広くとっているとか、一株当たりの稲のつかみが3つなのか5つなのかといったことは違うわけです。
あると思うんですよ。ある方が島根のほうに移住されて無農薬のコメ作りに挑戦されたそうな。ところがある時稲刈りの前に大雨が降って、田んぼがぬかるんでコンバインが入れず、とうとうその方は一人で鎌で稲刈りを始めた。なんでもテレビの放映ではその都会の人が苦労してるのが近所の人に伝わって、みんなが稲刈りを手伝った、ということになっていた。
だけど、そういう場合には私たちは「ぬき」といって、田んぼにかなりの深さの溝をつくって、水を逃がすのです。そうすると、何日かの晴天ののち、そして周囲から手で刈って行くうちに、田んぼが固くなって機械が入れるようになる。都会の人はご存じないから仕方がないけど、そんなときに教科書があって「溝を掘ります」と書いてあるだけでその人は救われたかもしれない。
うん、これいいんじゃない?今日明日というわけにはいかないけど、ちょっと提案しておきます。