今年は、大河ドラマが明智光秀なので、戦国武将たちがいろいろ出てくる。
光秀に関しては、通常裏切り者、嫌われ役で、信長からはきんか頭と罵詈雑言を浴びせられ、一時の恨みで本能寺の変に走ったと今まで思われてきて、大抵今までのドラマではそのように描かれてきた。おそらくそれは太閤記のような、秀吉側の歴史の記録で、光秀をことさらに貶める必要があったかもしれない。新しい研究で、そういうものとは違う事実に光が当たったということもあるのだろう。
歴史は勝者の歴史で、我々はいつも勝者の立場で歴史を見る。当然のように織田信長は桶狭間で勝つものと考えているし、徳川家康は関が原で勝つものと思っている。しかし、そのさなかにいる人は、どちらが勝つか、まったく予断を許さない状況の中にいる。
もし織田信長が駆けつけた時に、今川義元が桶狭間にいなかったら?桶狭間の今川軍が、もっと多かったら?今川側が織田側の奇襲を察知していたら?直前に雨が降っていなかったら?
その中にいる人にとっては何一つ定かではない。
現代にいる我々は、たとえば天気予報は見られる。しかし彼らにはそういうものはなかった。レーダーもないし、無線やトランシーバーもなかった。
「この戦、勝てるか?」
それを決めるのが、単に理性的なデータによる判断だけだった、と考えることは自分は無理があると思う。その際に重要な役割を果たしたのは占いだったのでは?遁甲とか、陰陽五行を使った四柱推命やそれに似た類の占いを行えるものがいれば、必ずそのものは重宝されただろうと思う。実際そういう役どころで知られているのは徳川家康に仕えた天海という僧だ。また武田信玄は占いを頼りにしたと言われている。しかし、それ以外に多くの場合武将の使う軍配にはそういう占いで使う象意が書かれていて、恐らくそうした知識を持つ人が周囲にいただろうと思うのです。
だから時代劇を見ていて、そういう描写がないことには、少し物足りなさを感じる。多分、何らかの形で、信長は、漠然とでも、「この戦は勝てる。こういう形成に持ち込めれば・・・」と思っていてもいいと思う。それが、直前に誰かから進言があったのか、あるいはそれよりずっと以前に「お前さん、何歳ぐらいのときに大一番を迎えるだろう」的なことがあったのか、いずれにしても、である。
今川義元のほうは?たとえば今川義元がこの戦で何か問題があるという占い結果を告げられていたとしても、恐らく占い結果だけで判断するわけではないと思う。実際の軍隊の勢力でみれば、今川方が圧倒的に多かった。そして、彼自身に不安があったとしても、彼の取り巻きが「殿、今が攻め時でございます」と言われれば、それを覆す決定的な何かがなければ反対しにくいものだ。
いずれにしても、戦争は勝てばいいのだ。学問の正統性とかそういうことはどうでもいいのである。占いが怪しげだ?いやいや、その怪しげな判断で勝てるのであればそれでいいのだ。たとえばソ連ではアメリカに対してあらゆる軍事的な優位を得るために、超能力のようなものが研究されたということは知られている。逆に原爆が研究されたロスアラモスでも、それまで取り上げられなかったような、いろいろな研究が発達した。