今回、バイデンさんは、いろいろな意味で従来の大統領にない、異例の候補だったと思う。
最高齢だというのは言われています。それからこの人はカトリックです。アメリカの大統領は白人でプロテスタントと決まっている。唯一の例外はケネディで、バイデンさんが大統領になれば二人目のカトリックということになります。両方ともアイルランド系の人らしい。
それからハリスさんが異例中の異例です。女性で初めての副大統領、そして黒人です。さらにジャマイカから来たお父さんとインドから来たお母さんの娘さんで、どうもご両親は離婚されてお母さんに育てられたようですから、ヒンドゥー教のバックボーンを持った方と言っていいのだろうと思う。
自分は、トランプさんは、いけずというのか乱暴というのか、規範を壊す人というのか、そう言うキャラクターだと思うし、多分誰もがそう思っているだろうと思います。うまい形容詞が思いつかなくて、多分ギリシャ語ではάτακτος(アタクトス)というんじゃないかと思うんですけど、ペンスさんはなかなか落ち着いた真摯な方なのだろうという印象はうけます。しかし、ペンスさんは白人で、福音派の熱心な信者さんなんです。
トランプさんの選挙のスローガンは前回の2016年も今回も
MAKE AMERICA GREAT AGAIN
(アメリカを再び偉大な国にしよう)
でした。
ちなみにバイデンさんは
BUILD BACK BETTER (よりよく再建しよう)
元に戻すんだけど、もっと良くしようよ、的なスローガンです。
前回のヒラリーさんのときは
STRONGER TOGETHER
でした。これは「一緒にもっと強くなろう」ということかと思っていたのですが、出回っている翻訳では「一緒ならもっと強くなれる」となっているようです。
さて、このMAKE AMERICA GREAT AGAINですが、これに賛同している人が白人層ということを聞き、ペンスさんみたいな方を見て、さらに今回バイデン・ハリスさんの様子を見比べてみて、私みたいな鈍感な人間にも、やっとわかってきました。
再び偉大にしようという、そのモデルとなっている過去の偉大なアメリカというのは、要するに白人のアメリカのことなのだ。・・・いやいやもちろんそれだけではないとは思います。工業生産が盛んで、強い軍隊を持ち、人々が豊かな生活享受するアメリカ。収入も高かったでしょう。しかし、それでもそのモデルになっているのは白人のアメリカだった。
日本の高度成長時代、コマーシャルはアメリカの家庭がモデルになっていた。きれいなキッチンでスカートをはいた女の人がエプロンをして、コンロだか電子レンジだか何かを使って、こぎれいに台所をする。モンペで手拭いで髪を覆っていた当時の日本の女性たちは、恐らくその姿にあこがれ、同時に日本は次々と新しい家電製品を生産していった。しかし、そこに出てくる家庭のきれいな女の人は黒人でもスペイン系でもない。やっぱり白人だった。
アメリカを偉大な国にする。それはいいかもしれないけど、元のようにはならないと思う。今回の選挙で、国民の分断があらわになったと報道されています。トランプさんの業績は業績として評価されると思う。壁だって無意味ではなかった。だけど、その白人のアメリカ的なものには多分もどらないよ。
じゃ、どうするの?中国人もラテンアメリカもスラブ系もごっちゃに入っているアメリカで「これがアメリカです!」というものは何か。今からの指導者にはそういうモデルを提供することが求められるんでしょうね。