ご存じの向きも多いだろうが、通常プランテーションなどで安く生産される農産品を、労働に見合った少し高めのお金で出荷、売買することをフェアートレードという。コーヒー、チョコ、紅茶、こうした熱帯の農産物は、現地の人の極めて安い賃金に支えられて、我々の日常に届けられている。それに対してフェアな売買をしましょうということである。関西ではいろいろあったけど、ここではあんまりそういう看板を目にしたことはないような。
いろんなことを感じる。
日本人にわかりにくいのは、日本人がフェアでないトレードというものになじみがないからだと思う。これが一点。
大日本帝国は植民地に対して、民族や身分による制度的な差別を許容しなかった。韓国人であれ台湾人であれ、同じ東アジアの人間として、本土と同等の教育、同等のインフラを整備した。イギリス・オランダ・スペイン・ポルトガルといった国は、現地の人をしいたげ、場合によっては外部から労働者を導入してこき使った。今でもスリランカの紅茶畑で働く女性の皆さんは驚くほど低い賃金で働いていると聞く。
もう一つは、今生産者であるということ。
子供の時にいちいち考えてみたことはなかったが、雲南、奥出雲という土地は湿潤で穏やかな気候に恵まれ、米も少量ながらいいものができるし、お茶も大量生産ではないがあちこちの農家が栽培するということが珍しくなく行われている。ほかにもさまざまな農産品がある。
だけど、現実的に茶摘みなどというのは大変な作業だし、その作業で飯が食えるほどの売り上げになるかというと、やっぱり難しいですよ。そういう目でトワイニングの紅茶缶が何百円かで売られているのとか、コーヒー豆が500gで700円ほどで売られているのを見ると、自分は買うときは安いのを選んで買ってはいるのだけれど、現地の人は安くてやってるんだろうなあ、と思う。