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Beautiful Wish

Beautiful Wish、例のぴちぴちピッチのインド洋の新しいマーメイドプリンセス星羅さんの持ち歌のギリシャ語版なのだが・・・

リンクが張ってあるのをみて、歌もきれいだし、場面もきれいな場面だと思った。しかし、正直なところおっさんが少女漫画のアニソンについて熱を込めて語る、みたいなことに自分はちょっとためらいを感じた。
こんなの、誰が読むの?ギリシャ語版なんて誰がわかるの?みたいな。しかし、考えてみると、日本でこんなこと言えそうなのは自分ぐらいなものだ。そして、そうであるにもかかわらず、こういうものが出来上がるためには、日本でもギリシャでも多くの人の努力が必要だ。だから、まあ書いてみようと思いなおした。ひょっとしたら、もの好きな日本の乙女が「へぇ、こんなのあるの」と思うかもしれない。

物語

自分はまだ物語的にここまでは見てないのだけれど、ざっというとこういう話です。
主人公の人魚たちのお目付け役のヒッポ君は、普段はペンギンの格好をして三枚目を演じているが、時々美少年の姿になる。ところがあるとき、この人魚たちの敵役になる水妖(ネロ・デーモネスと訳されているようだが)の一人ユーリさん(ウレイ)とお互いに恋に落ちてしまった。相思相愛でヒッポ君はバイトしてユーリさんにサンダルを買ってあげる。しかし、一応人魚側のキャラクターとして自分の立場をわきまえて、今は一緒になれないのだと告げる。
いろいろキャラクターは出てくるのだけれど、ヒッポ君はけなげで、主人公よりも「この二人、それでどうなったの?」と思ってしまうところなんです。
で、どうやら前半の終わりにこのユーリさんは悪役の大将と一緒に死んでしまうらしい。
ところが後半の話の中で、100年に1度だけ願いがかなう奇蹟の場所があることになっていて、時間ぎりぎりにすったもんだの末にユーリさんと再会できる。ところがそこで魔法の切れる夜明けの時間が来てしまう。せめてもう少し一緒にいさせてくれと主人公が頼むところで、星羅さんが自分の正体を明かして「やってみるよ」と言って歌いだす、という設定になっている。

歌手

この日本語版は、喜多村英梨さんという声優さんが星羅役をやっていて、そのままこの歌も歌っておられるようだ。
https://www.youtube.com/watch?v=e-yUvhhQqtk
だけど、ギリシャ人は声優と歌のパートを分けて、歌のパートはプロに歌わせている。ここではステファニーア・フーギアΣτεφανία Χούγιαという人が歌っている。この人も、ルチアやサラの歌を担当していてアナ雪のアナ役をやったヴァシア・ザハロプールさんと同じようにディズニーや多くの歌の吹き替えをやっている。

もちろん、喜多村さんの歌なのだし、そもそもギリシャの翻訳ものが出る何年も前に一から作り上げたのは日本側なのだから、それはそれで尊重するとしても、歌のクオリティはギリシャのものの方がきれいだと思う。

歌詞

Με αγάπη ένωσες τα όνειρα / 君は愛で夢を一つにした
Τα άστρα θα σου τραγουδούν / 星々は君に歌う
Να ‘χεις πίστη πάντα στη καρδιά / 心に全てに対する信を持て
Σε κρατούν τα άστρα αγκαλιά / 星は君を抱きしめ
Κι όλα θα ‘ναι αληθινά. / すべては真実になるだろう
Το γλυκό σου βλέμμα λάμπει δυνατά /あなたの甘い一瞥は強く光り
Οι φόβοι φεύγουν μακρυά / 恐れは遠くに去る
Όταν έφτασες στον κόσμο αυτό / この世界に君が到着するとき
Όλα γύρω σου γέμισαν με φως / 君の周りすべてに光が満ちる。
Άστο να σε οδηγεί / 導かれるままにしなさい
Κι η λύπη θα διαλυθεί. /そうすれば悲しみは解きほぐされるだろう
Μόνο δίπλα σου αν σταθώ / あなたの隣に立てば
Τότε μόνο όλα τα μπορώ / そのときだけは何でもできる
Σε ταξίδι ονειρικό / 夢の旅路で
Ταξιδεύουμε κι οι δυο / 二人で旅をしよう
Έχεις θάρρος και δύναμη / 君には力と勇気がある
Κι όπου πας θα σε ακολουθώ / あなたが歩むところに私は従う
Θα με πλάι σου / あなたの隣にいて
Μονάχα για σένα τώρα ζω. / 今はただあなたのために生きる

この歌に関しては日本語の歌詞にも今までのような外来語はない。
http://j-lyric.net/artist/a04d595/l00c20e.html
ギリシャ語の歌詞も、物語中にあって全く違和感のないきれいなもの。しかし、歌の中身は全く違うものになっている。日本語は状況描写の言語と言われる。景色を描写するとリアルで美しいが、抽象的な概念を表すことは不得手なのだ。
ちょっと見ると、荒川静香さんがトリノのエキシビションで使ったケルティックウーマンの「You raise me up」に似ているようにも思える。たぶんあの歌詞を見たときも、日本人の感覚では「こういうので歌になるの?」と思った人もいるかもしれない。

多分、ヨーロッパにはたくさんジャパニメは紹介されているんだと思う。ただ、この作品は主人公の歌に力があるのだ、という設定になっている。それが海外では成功だったのだろう。つまりディズニーやミュージカルと同じリソースでテレビプログラムを作ることができる。優れた歌手を使うことができるし、単に翻訳家がいるだけではなく、作詞のプロフェッショナルも必要だ。

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