高校野球で各校の校歌が流れます。短い歌もあるし、なんかやたら長い歌もある。大体が文語の歌詞です。中には、こんな難しい単語ひねくりだしてきて、聞いててもわからないじゃないか、というのもある。一方でやたら現代的な歌詞の学校も最近はあるようですね。
だけど、大体言葉の上での一つの母音が一つの音符に対応している。これ、なんか、面白くない。
ビザンチンの聖歌の分類で、母音と音符の対応状況で3つの歌の種類がある。
- 一つの母音が一つの音符に対応しているのをイルモロギカ
- 一つの母音が複数の音符に対応する場合があるものをスティヒラリカ
- 一つの母音が数小節にわたって続くものをヘルヴィカ
と呼んでいる。
敢えて分類すれば、日本のほとんどすべての歌がイルモロギカになると思う。かなりゆっくり歌い上げる歌でも。
ヘルヴィカというのは、江差追分か南部牛追い歌の、もうちょっと間延びがするやつ、ということになる。聖歌の中では比較的重要な場面で歌われる歌が多い。いわゆる聖体拝領の時間なんかは、多くの人が並んで会衆にあいさつしたり、そういう時間的なゆとりがいるし、その間に一定の神妙な感情と言うのをキープしないといけないわけで、そういう意味でヘルヴィカが適しているというわけです。
スティヒラリカで良く取り上げられるのは夕方に歌われる「主や爾に呼ぶ」という聖歌です。
日本の歌でいうと、「上を向いて歩こう」がスティヒラリカになるかもしれない。
「なーみだがー、こーぼれー、なーいよーおーおーに・・・」
みたいな。なんでも坂本九さんが民謡出の歌手さんで、民謡の歌い方を生かすにはどうしたらいいかみたいなので、中村八大さんがその「よーおーおーに」みたいな複数の音符に一つの母音がまたがる歌を作ったのだとか。
実際、安来節とか、最上川舟歌みたいなのが、スティヒラリカにちかいかなあ。
それで、自分は高校の校歌なんてものは、スティヒラリカでもいいと思うんです。藪から棒ですけど。
つまり、「我らが希望」だったとしたら
わああああれええ、らあああがああ、きいいいぼおおう
みたいな曲がついててもいいと思うんだ。